2024/08/16 18:34


RAYLINEとしてヒンメリ制作などの活動をはじめて4年。ついにこの日がやってきました。

千葉県木更津市にあるKURKKU FIELDSさんでスタッフ様向けにワークショップを開催することになったのです。

 

KURKKU FIELDSさんは『農と食、アートと自然。いのちのてざわり。』をコンセプトに、どこから楽しんでもひとつの環(わ)でつながることを感じていただける場所です。

広大な敷地の中では畑やニワトリの飼育場、水牛やヤギの小屋、竹でつくられた巨大ブランコなどがあり、どの場所にいても太陽を感じることができます。太陽の光をさんさんと浴びた野菜や小麦がすくすくと育ち、ケージフリーでのびのびとハウスを駆け回るニワトリが産卵してくれる、透明感のあふれるレモンイエローの色をした卵などを場内のレストランで食べられたり、ショップでご購入いただいたりすることができます。農場で育った小麦を石臼で挽いて小麦粉にし、新鮮な卵を使用して職人が心を込めて捏ねた美しいパンの数々も召し上がっていただけます。








今回は様々なご縁がつながり、いのちのてざわりを感じていただけるこのKURKKU FIELDSさんでヒンメリワークショップをさせていただけることになりました。

 


定休日のとある日、スタッフの皆様と朝8時に農場の前で集合しました。


ご挨拶をしながら歓談していると、大きなカゴを持った一人のスタッフさんがさっそうと現れました。カゴの中に入っているのは早朝に掘ったじゃがいも! うっすらと土をかぶっていたので、スタッフの方が手慣れた様子でホースから勢いよく水を出し、きれいに洗われたじゃがいもは紫色をしていました。植物と土と太陽と水などが融合するとこんな鮮やかな紫色になるのかと驚きつつ、そのあとも続々と野菜たちが洗われていきました。こちらの野菜たちはOisixKURKKU FIELDS合弁会社オイシクルで販売されてお客様の元へ届くとのお話でした。




 


実はこの日、朝8時に集合した目的は場内で育てられていた小麦の収穫をするため。雨が降ってしまうと小麦は収穫ができないのですが、この日はさわやかな風が畑に吹き抜ける晴天で小麦の収穫には最高の気候でした。私もスタッフの皆様に混ざって軍手と鎌を手にセットし、いざ収穫。







私は同様の稲科であるライ麦を埼玉県で数年育ている為、手刈りの麦収穫は経験があります。ほどよい小麦の束を左手で持ち、ザクッと根本付近を右手の鎌でひとかけする。畑の栄養を根から穂に届け終わった小麦は収穫前に太陽の下でしっかり乾燥させることで、鎌をひとかけするだけで簡単にカットすることができます。

スタッフの皆様も要領よくザクザクと刈り、あっという間に刈った小麦の山ができていきました。順調に進む作業の途中で小休憩をしたときに出していただいた『フラガール』という品種のミニトマト。これでもかというくらいジューシーで甘く、乾いた喉と体を隅々まで潤してくれました。


刈った小麦は、藁と穂を分離する機械にかけて、集められた穂は水分をチェックした後にベーカリーショップ横にある石臼で挽かれ美味しいパンへと変身していきます。





 



予定していた小麦収穫が早く終わり、ワークショップを行う前にヒンメリや私自身についてお話をさせていただくことになりました。

日本において小麦やライ麦を育てる多くの目的は、穂を収穫して人や家畜の食物にしたり、茎を敷き藁にして作物を育てることやすき込んで土壌改善したり等で活用されています。こうして茎の部分の藁はいずれ土へ還るのですが、収穫した麦の藁をつかって幾何学模様のヒンメリを作り天井から吊り下げて飾ることで、土に還る前に藁にも役割を与え、私たちの心を視覚から癒してくれる存在へと変化させることができます。


この日、小麦収穫とヒンメリを作るワークショップをセットに行うことで麦という植物からひとつの環(わ)を感じる体験となりました。


昼食を予定していたレストランに向かうと美味しそうな香りが鼻に入り、目を向けるとキッチンでは美しい器が並べられ、色とりどりの食材をシェフやキッチンスタッフの方々が手際よく並べているところでした。思わず感嘆の声がでてしまうほど美しい様子に見惚れていましたが、私にはスタッフの皆様へヒンメリについてお話しをするという大きな任務があります。後ろ髪を引かれつつ、緊張する自分を笑顔で鼓舞し、壇上へと向かいました。




 


ヒンメリが生まれた歴史、なぜヒンメリをつくるのか、ヒンメリの材料として畑でライ麦を育てることにした経緯、ヒンメリに込めた想いや願いなどをお話しました。普段は一人で黙々と制作をしている私にとって、想いを言葉でお伝えできる大変味わい深い時間を過ごさせていただきました。大切にしている想いが同じ温度で伝わったように感じ、心から嬉しかったです。




 


そんなことを思っているとキッチンからお声がかかり、目の前のテーブルに先ほどの彩り豊かなの食材が盛られた器が規則正しく並べられていきます。この日は定休日です。どうやってこんな様々な食材が器の上に並んでいるのかお聞きすると農場やシャルキュトリーなどで余った食材を集めてキッチンのシェフが創作してくれたのだと言います。『余った食材』とは全く思えない美しい料理を眺めて、おもわず感嘆の声がでました。廃棄するのではなく、変化をさせて新たな一品にすることができるすばらしい工夫とアイデア。ここでもKURKKU FIELDSさんの環を実感しました。







美味しい食事と楽しい会話であっという間にランチタイムは過ぎてゆき、食器の片付けも片付けも手際よく終わり、ついにヒンメリワークショップが開催されることになりました。

場所をレストランからベーカリーへと移し、いざヒンメリ作りのスタートです。





 


今回は私が育てたライ麦を使って、個々にヒンメリを作っていただき、最後はそれらを全て集めて繋ぎ合わせて一つのヒンメリ合作品『SEEDS』をつくるという予定でした。当日を迎える前にヒンメリのデザインを考えている中で、KURKKU FIELDSさんで働いているスタッフの方々を想っていたところにふと現れた言葉が『SEEDS(種)』でした。


私たちが食事でいただく野菜や果物は立派な姿形をしていますが、それらの種は一粒がとても小さいです。しかし、土へ蒔かれ、地中の栄養を吸収ししながら雨や陽を得た種は地中に根を張り、ぐんぐんと成長し美味しい野菜や果物になります。

私の考えですが、KURKKU FIELDSさんで働くスタッフの皆様は日々『種』になるお仕事をしていると思います。家畜に食事を与える、畑の土を耕す、レストランの食器を洗うなど、スタッフの皆様が行う手仕事ひとつずつがとても大切な点であり、それらの一つひとつの点がつながり大きな線へと紡がれていくことでKURKKU FIELDSさんが出来ているのだと思います。この小さく繊細で大切な『SEEDS(種)』をスタッフの皆様に作っていただき、最終的に繋ぎ合わせて1つの作品に仕上げることで素敵な作品になると確信し、こちらの作品を作っていただくことにしました。

 






まずは、麦わらの選び方やはさみでのカットの仕方、綿100%の糸を通した針を使って麦わらを繋ぎ合わせる方法をご説明し、制作が始まりました。実はこの『SEEDS』という作品は制作レベルを1~3に分けるすると難易度高めのレベル3だったのです。。。今回が初めてのヒンメリ作りの皆様は、慣れない麦わらのカット方法や入り組んだ針の動きをするヒンメリ作り。様々な声が聞こえました(汗)。







ただ、この作品は絶対に素敵な作品に仕上がる自信があったので、難易度が高く皆様に申し訳ない思いもありつつ、仕上がりまで最大限サポートさせていただきました。






 



慣れない作業の中でも作品を完成させた方々が率先して制作に苦戦している方をサポートしてくださったおかげで、全員が作品を完成させることができました。広大な敷地の様々な場所で働いているKURKKU FIELDSのスタッフの皆様ですが、境界線なく支え合うチームワークの良さと関係性をみさせていただきました。








完成した作品を集め、最後は私がひとつの作品に仕上げ、オリジナル作品『SEEDS』が完成!

こちらの作品は『 ベーカリーショップ Lanka』に飾っていただいています。

KURKKU FIELDSさんへぜひ、足を運んでいただき一目見ていただけましたら嬉しく思います。







実はプレオープン時より通わせていただき、場内の宿泊施設にも泊まらせていただくほどに以前からからKURKKU FIELDSさんのファンだった私が初めてのヒンメリ制作ワークショップを担当させていただくということで大変緊張した一日でした。温かく受け入れてくださった上にスタッフの皆様と同じ目線・温度で時間を共に過ごせたことに感謝しています。


小麦というひとつの植物の収穫からヒンメリ完成、そして温かいコミュニティーまで、ひとつのいのちの循環を体現した一日となりました。